何事もなかったかのように書き始めますが、 これからも、忘れた頃にやってくる天災のようなコラムとして、 どうかひとつ。
昨年8月からまた救急に携わっているわけですが、 研修だ学会だ当直だと楽しく忙しく日々を送っておるようなわけで。 書く事はたくさんあるんでごぜえますが、 こいつがまあ、ため込むばかりで、へへっ。
気を取り直して。
このところ医学教育界を含め、救急界(?)で流行っているもののひとつに、 ACLSというのがある。 (どうでもいいけど、こんな言い方しちゃっていいんだろうか。 「卒然卒後教育を含め、医療の現場でトピックとなる命題のひとつにACLSがある」 とか言ったほうがいいんだろうか。 でもそんな文体で書き続ける事は今のわたしには不可能なので、 これでいきます。 なぜ不可能かというとひさしぶりにのんでいい気分だから) Advanced Cardiovascular Life Support、心肺蘇生法のことだ。 いわゆる心臓マッサージと人工呼吸のことはBLS、Basic Life Supportという。 2000年にAmerican Heart Association(AHA)という学会が、 心肺蘇生法のガイドラインの新しいやつを出し、 これがまたいわゆるEvidence Based Medicineに乗っ取って作られており、 これに沿った心肺蘇生を普及させようと、 医師、看護師、救急救命士といった人々を対象に、 全国各地でコースが開催されているのである。 AHAコースとnon-AHAコースをめぐるごたごたとか、 いろいろあってるけど言わないけど(言ってるやん)、 まあ、そういうわけで、わたしもこの2日間コースを受けて、 その後インストラクターとしていろいろやってるわけです。 ここまで前ふりです。
2日間コースというのは、 1日目が講義と気管挿管、モニターの見方、 除細動(いわゆる電気ショック)、心停止のアルゴリズム。 2日目が不整脈のアルゴリズムと1日目の復習、午後からテスト。 そう、このコースは合否があるのである。 脈も触れるし呼吸もできる人形を使って、 実際の患者さんに接するように、テストは実技形式で行われる。 患者さん急変 ↓ 人を呼ぶ、物を集める ↓ 心肺停止を確認して人工呼吸と心臓マッサージ ↓ 人が集まる、モニター装着、心電図確認 ↓ 心電図によってそのアルゴリズムで治療開始 除細動、挿管、薬剤投与など ↓ 正しくいけば患者さんは息を吹き返す ↓ よかったよかった
ただし、落ちても同日に再試験が可能で、たいてい3回くらい受ければ皆通る。
しかし、合否があるというプレッシャーが織りなす悲喜こもごもが、 ACLSコースに毎度毎度さまざまなエピソードを提供してくれる。 これが次回へと語り継がれて伝言ゲーム状態となり、 さらに受講者のプレッシャーに拍車をかける。 回を追うごとに、マニアックなまでに微に入り細にわたって、 予習問題や実技試験用のシナリオを作成する部長の功績(?)もあるかも。 「あの先生のブースは厳しいらしい」 「あの先生のブースではひっかけ問題が出る」 わたしのブースでは「なんかいたずらされる」という根も葉もない噂が。
予習は必至であり、 コース数日前に、病棟のあちこちで、 「誰か3人来てください」(これを言わなきゃ始まらない) 「エピネフリンを1mg静注してこれを3分ごとに繰り返してください、 最初の投与後1分たったら教えてください」(舌をかむ) 「この方、体重は何キロですか」 と、うつろな目つきでつぶやいてる人をみたら受講者と思って間違いない。
かくして迎える当日。 これ、はっきりいって受講者よりインストのほうがきつい。 しゃべりっぱなし、受講生の間違いを見落とせないので気を抜けず、 へこませないようにへこませないように、 1つのnegative feedbackにはかならずpositive feedbackを組み合わせて。 もうほめる所が見つからない時に、 「姿勢がいい」などとわけのわからないところをほめてみたり。 最近はかなり上の先生方も受講されるようになったので、 わたしよりずうっと上の先生に「あ、それ、違う・・・」というストレスも。 緊張したひとりの受講生が、 口がまめらずに「人工マッサージ」って言ったのが皆に感染し、 わかってるのに訂正するのも気の毒で、そのまま押し通してしまったこともあった。
あと、なぜかコース開催中に必ず院内心肺停止(ずうっと昔に書いた「ハリーコール」)とか、 救急車で運ばれてくる心肺停止とかがあって、 いつもの倍以上の医療従事者が現場に駆けつける。 こないだはハリーコールがかかったとたんに、 4つある各ブースから一気に除細動器が現場へ運ばれて、なかなか壮観であった。 (こういうとき、船頭多くして船が山に登りっぱなしにならないようにリーダーを決めるのも大事)
困るのは、コースが終わった後にも変な口調が後を引き、 打ち上げの飲み会で、店の姉ちゃんを呼ぶのに、 「誰か3人来て下さい」 などと言ってしまったりすること。
患者さんの急変にあわてず適切な対応ができるし、 医療従事者の中でも異業種が集まって一緒に受講する事で、 救命士さんの、大きな声で自分が何をしてるのか周知すること、とか、 看護師さんの細やかな声かけ、とか、 それぞれが自分の仕事にない発見をしたりして、 それもまた楽しいコースなので、 医療従事者の方はぜひ一度。
来週は教える方。 再来週は本場のコースを受講しに行ってきます。 ひさびさの受講する立場にてんぱっている今日この頃。
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