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コラム S.S.の「脱おっさんカルチャー〜チクチクケンチク」

若手建築家が送るケンチクな世界
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完了検査
Date: 2004-06-30 (Wed)

苦心して設計した建物が竣工するのはうれしいものだ。でも自分のモノのような気がしていた住宅が実はお施主さんのモノなのだと思い知らされる時でもある。竣工引き渡しの時は何とも娘を嫁にやるような感覚になる。(娘も居ないし嫁にやった事もないけどさ)

そう、竣工の時期が近づく5月の晴れの日。もうすぐ晴れて業務完了!というような時に施主から一本の電話。

施主「ssさん。完了検査、受けたいです」

ss「マジっすか・・・(凍)」

またあの役所に行くのか、主事に会うのか、検査担当に会うのかよ・・・
しかし断る事は出来ません。僕は別になんの違法行為もしてませんし、やましいことは一切ない。堂々と受けましょう。完了検査。

検査当日

普通は、建物の敷地からの離れ距離をはかってプラン通りに建築されているかを確認し、ちゃんちゃんOKで終わる。建物の高さも重要なところだけど、普段あんまり計ったりしない。めんどくさいからである。

しかし、今回の検査官はちがった。高さを計り始めたのである。

高枝切りハサミみたいなスルスルのびる棒の先にフックがあって、ここを建物の軒先に引っ掛けて棒の下を地面につけると手元のメータが何メートルあるか表示するのである。

設計どおり建ってるし問題ないっしょ。っていう気で見てたら検査官二人でなにやらゴソゴソ言っている。

検査官A「ssさんちょっといいっすか」

ss「え?はい?」

メーターを覗き込むと5640と示してあった。

検査官B「確認 5590ですよね」

ss「え、ええ(凍)」

お分かりだろうか、確認申請で建物軒高5590mmと申請しているにも関わらず、実際の施工された高さが5640mm。つまり5センチ高いのである。しかーも!この軒は北側。北側斜線限界が5630と記してあるので高さが高いどころか、北側斜線に引っかかっとる!(爆泣)


違法建築には赤い紙が張られると言う噂を聞いたことがある。
この家にもそんなの張られるのかなぁ、施主になんて説明しようかなぁ。建物削って低くしろとか言われるのかなぁ,


15秒ほどの沈黙の後

検査官A「オッケー!」

検査官B「よしっ!」

ss「(はぁ?)」

通常5センチぐらいは施工誤差として認められるが今回は北側斜線。許されないだろうと思っていたのに。僕が思うにめんどくさいのだ、北側隣地の住人が出てきたら最悪だし、今後の書類の処理とか、面倒な事はないにこした事はない。

ss「(ちょ〜ラッキ〜。でもあんたら何しに来てるんだよ(爆))」

晴れて完了。竣工。

そして今お施主さんは3人家族で楽しく暮らしています。(笑)





中間検査
Date: 2004-06-30 (Wed)

つづき

確認申請も無事(?)下りて着工した物件は、コンパクトなカワイイ箱形の木造2階建ての住宅だった。(どんなのか見たい人は写真みせましょうか)

通常、確認申請が下りると工事がはじまり、建物の規模と構造によって、中間検査、完了検査と役所の立ち会い検査を受けるのである。
確認申請通りに建物が建設されているかをチェックして最後に検査済書という証明書を発行してくれる。これはこの建物が法規に乗っ取って建築された証なのである。(付け加えるけれど、もし仮に大地震が来て建物が倒壊したとする。建物が法規に違反せずに建てられているこの証明を持っているからといって役所が保証してくれるというようなものではない。)

<↓ココから下はフィクションです(謎)>
しかしながら僕ら設計者は時として法を犯す(爆)
例えば、都心の密集地に住宅を建てる場合などは防火上の観点から窓ガラスに網入りを求められるが、施主さまがどうしてもいやだと言う場合には違法である旨を説明し、それでもよいと言われれば、検査をぶっちぎって建てたりする事もある。

この物件の場合も中間、完了、検査は全部ブッチギるハズだった。
通常、こちらから検査の申し入れをしないかぎりは大丈夫だから。
特に違法している訳ではないけれど、施主もこだわらないし、第一面倒だったから(笑)そしてあの憎っくき主事に会いたくないから。

しかしである、この自治体はちがった。建築局の人間がパトロールしているのである(爆)市内の工事中の物件を見れ回り、時期がくると向こうから電話してくるのである。

役所担当者「ssさん○○邸、中間検査申請してください」

ss「あ、はい(汗)」

そして検査当日。
木造住宅は阪神大震災以降構造に関して告示で細かく仕様が規定された。柱と梁をつなぐ部分には認定の金物を用いて緊結しなければならない。昔ながらの大工さんはこれをいやがる。「こんなもん付けなくても大丈夫だ。役人さん説得してくれ」と。
無理である。
後日取付けて写真を持ってくるようにと言われたので、取付けてもらい、写真撮影。

僕の考えだが、役所にいわれるがままに施工して法規に違反していないからといって安全だとは言えない。経験を積んだ大工さん、そして構造設計事務所という建築の構造計算をやる事務所の監理のもと設計と施工をして責任もって構造的に安全だと言える。


ちなみに後日役所に写真を持っていった。役所の検査担当者に説明する。横目にあの主事をチラチラ見つつである。いつまたどやされるか(汗)
この時発覚したのだが、実は1カ所撮影し忘れた部分があった。このままだと中間検査済書が出ない。

どうしたかというと、とっさの判断で別の柱と梁の接合部を該当箇所だと言い張った。するとすんなりOK。(爆)

みなさんどう思われますか?

つづく (次回は涙と感動の完了検査編)



確認申請
Date: 2004-06-30 (Wed)

他のコラマー(?)と同じように少しは職場の実務的なエピソードを書いてみようと思いました。

3部作です。避けて通れないお役所とのやりとり。

建築を建てる場合、この場所にこういう大きさのこういう構造のこういう形の建物を建てます、関係法規に照らし合わせて違反していませんので建築の許可をください。と所轄の行政庁にお願いする。いわゆる確認申請というヤツである。これは建物の規模に関わらず、かならず必要で、住宅を建てる場合にも超高層ビルを建てる場合にも基本的には同じ。確認申請を出してないのに工事を始めるとお役所が飛んできて、即刻工事差し止めである。

関係法規というのは主に建築基準法。基準法と基準法施工令、あと細かな告示にことごとく照らされる。日本国内どこでも同じ法律が適用されるのだから特別な条例がないかぎりはこの確認申請時に行政庁が行う判断は日本全国どこでも同じ(ハズ)なのである。

しかし、行列のできる法律相談所を見ても分かるように「法解釈』というのは人それぞれ。つまり行政判断はその自治体の建築主事の判断によって、ものすごく左右されるのである。
だからトラブルが起こる。

こまかい事を書くと捕まる(謎)かもしれないので書けないんだけど、僕ら設計者はその法解釈のギリギリの線というのを攻める。施主様の要望にできるだけ答えられるように行政庁にある種の柔軟な(笑)判断を求めるのである。2年ほど前、ある自治体に協議に行って、確認申請を提出した。この時も実はそのギリギリのラインを攻める法解釈をもとめ、以前に他の自治体ではOKもらったという事例を紹介し、その役所の担当者はなんとか合法と判断してくれたのだけど、確認申請の認可がおりるというその日の前日、役所から電話かかってきた。

役所担当者「ssさん。明日、ちょっと早めに来てもらえますか?」

ss「え?なんか問題っすか?」

役所担当者「いえいえ、大丈夫なんですけど。主事がね‥ちょっとだけお話があるって(笑)すぐおわりますから」

ss「えっ!はぁ。」

次の日役所に出向くと、普通は入れない執務スペースに通され主事机の前にちょこんと座らせられた。

主事 「おはようございます。どうもすいませんね」

ss「あ、おはようございます(いい人そうじゃん?)」

主事「あのねぇ。ssさん確認申請ってのねぇ、通常日本全国同じ判断せにゃならんのよ。」

ss「え?あ、はい。そのとおりです。行政庁によって判断が違うなんておかしいと思います!(調子に乗ってしまった)」


主事「(プチッ)あのねぇ、だけどねぇ、日本全国風土も違えば文化も言葉もちがうんだよっ!おんなじ判断なんかできんだろう?あんたもわかるでしょ?(大声)」

ss 「(え??えー?結局叱られるの?(爆))」

そのあとは、一級建築士の資格はいつとるんだとか、わけのわからんいじめにあい、1時間ほどさんざんどなり散らされた。
まわりにいっぱい他の設計事務所の人やら工務店の人やらいるのに、事務所名を連呼され、いやぁゴメンね社長。今回は一度OKの判断をしたので確認は下ろすが次は認めねぇといわれ(というか二度とこねぇよ)、もらいたての確認済書を手に涙がこぼれないように上を向いて帰ったのであった。(笑)

二度とこねぇよ!(どころか何回もくるハメになるのである(泣))

つづく






価格バランス
Date: 2004-06-08 (Tue)

実家を新築する事になった。
地方都市、駅から車で10分ほどの街を見下ろせる住宅地。坪9万円の土地なのだ。(これは極端に安くて実際の評価額はちがいますよ)

東京の設計事務所ではたらく僕にとってこれはちょっと衝撃だった。
都内(目黒とか世田谷とか)の住宅地に計画したことのある住宅はたいてい、ウン千万円から一億円の土地に、建てた家の総工事費が2500〜3500万円というのが多いから、この場合、一億円の土地に3000万円の建物を建てているのだ。

東京のこの土地の高さは異常だと改めて認識した。
僕は車をもっていないのでよくわからないが、車のローンと駐車場代に例えさせてもらえれば、毎月車のローンに3万円、駐車場代が10万円。乱暴だけどそういう価格バランスだ。こういうバランスだったら果たしてみんな車に乗るだろうか?
こんな異常な建物と土地の価格の関係を不思議に思っているかいないかわからないが、今日もお施主さんが家を建てたいといってくるのだ。

これは悲しい現象だと思う。

別に、どうする事もできいないけど、東京の人って不幸なのかもしれないなぁ。とそんな風に思ったでした(笑)




浴室のタイル
Date: 2004-04-28 (Wed)

住宅の設計をしていて困ったことがおこる。浴室である。
別に気にしなければ何の問題もないんだけど、デザイン上気をつけるポイントがある。タイルの目地である。

とにかく浴室の大きさに対してタイルの目地が割り切れることが重要。半端物はあんまりだしたくないので、真物(まもの)でばっちに割り切れている事にこの上ない喜びを感じてしまうのです。僕の美学。これは設計者ならだれでもそうだと思うけど。

そうすると浴室の大きさっていうのは自動的にタイルの大きさの倍数で決まる。世間で一番多く使われるタイルは10センチの正方形タイルだからこの場合。10センチの倍数で決まる。そしてどの業界も同じだろうが良く売れるものほどコストが安い。安いから売れる。のスパイラルで、この10センチを谷にしてタイルの値段は大きくなるほど高く、小さくなるほど高くなるのである。

小さいものは2センチとか1.5センチとかのモザイクタイル。大きいものだと奥様お好みの花柄とかの20センチとか25センチとかある特大ものである。(僕は小さいヤツが好き)


さて、ちいさいタイルの話はおいておいて、大きいタイル。こいつは曲者である。僕が以前に設計した住宅のお施主様の奥様ご指定のタイルが20センチのヤツだった。なにしろ20センチの花柄タイルの半端ものは出す訳にはいかない。大きいタイルはお金持ちのイメージだけど、まさにそのとおり。20の倍数だと日本の住宅事情からして1坪の浴室の寸法は内寸どんなにがんばっても160センチはとれないのである。割り切れないからといって140センチの風呂はワンルームマンションのユニットバスみたいな大きさになってしまう。やっぱり180センチとか200センチとかにしたいよね。

だから小さいタイルにする事をオススメしたのだけど、奥様が嫌だという。結局、浴室壁の端に、僕の美学に反する半端者タイルがずらりと並ぶ。
しかもこの大きいタイル外国製。日本のタイルは10センチタイルは実は9.7センチでできている。そう。3ミリの目地をいれて10センチになるようにできているのだが、外人のつくったこのタイルはなんとズバリ10センチ。奥様が選んだタイルは壁が外国製、床が日本製。もうおわかりだろう。目地がずれるのである。ずれないようにするには床と壁のタイルの目地幅をかえないと収まらない。

なんてことない事だけど、そんなところにも結構苦労してるんですよ。






木のいのち、木のこころ
Date: 2004-03-14 (Sun)

西岡常一をご存知だろうか。鬼と呼ばれ、法隆寺金堂、薬師寺金堂や塔の改修工事や復元を手がけた日本一の宮大工である。
表題は彼の書いた本のタイトル。

法隆寺大工(という職業があるのも驚きだが)の3代目として生まれ、斑鳩の地で幼少から古来の寺社建築に肌で触れ、経験と実践に裏打ちされた自信にみちた語り口で、寺社を作る者、仏に使える者としての1200年にわたる宮大工の叡智を語り尽くしてくれる。

木を如何に使うかは人を如何に使うかにも共通する、大工の棟梁として、職人を束ねる立場の人間としての処世訓も満ちていてなるほど感動する。

最近ラストサムライブームに乗って、新渡戸稲造の武士道がベストセラーになっているらしいが、ここにも日本人の心をしる一冊がある。オススメです。



ローコストという魔法
Date: 2001-12-10 (Mon)

最近一般誌でよく建築の特集を目にする。建築というか住宅である。この御時世になんとも景気の良いことである(笑)
良く目にするのが、「狭小住宅」やら「都心に住む」やらいろいろ。そのなかでなんとも穏やかに見れないのが「ローコスト」。今回はこいつについて設計の立場から一言いわせてもらいます。

「ローコスト住宅」その名のとおりお安い住宅のことである。僕の所属する設計事務所にもよくローコスト住宅のクライアントがくる。
当人たちはべつにローコストだと思っていないのだけれど。

みなさん考えてほしい。普通住宅っていうのは坪単価60万円を切るのはほとんど無理である。住宅メーカーは坪単価20〜30万とかいっているけど、これはエアコンやキッチンを抜いたお値段である。だまされてはいけない。設計事務所が設計して、工務店さんに作っていただく。この場合は上のような金額になるものである。40坪の住宅の場合最低でも2400万円はかかる。まちがえないで いただきたいがこの坪60万円っていうのは超ローコストな住宅だということ。筆者が以前に設計した40坪の住宅は坪単価70万円を越えている。べつになんの贅沢なモノをつかったワケでもない。普通の設備、普通の仕上げでそのくらいになるのが建築家の住宅だ。それに設計料が加わり、消費税が加わりますから。

先日予算1800万円で130平米の住宅の以来があった。無理です。壁の仕上げしないならよいです。床も天井もベニヤの板で良いなら良いです。窓も小さくて良いなら良いです。部屋のドアや戸がなくても良いなら良いです。もちろんシステムキッチンも小さくて、トイレもウォシュレットなんて無理ですよ。お風呂もブローバスなんてもってのほか。

『ハウスメーカーは設計料はタダでやってくれるらしいわ』
なんていっている奥さん。じゃあハウスメーカーがあなたの家を設計して、工事に入るとき、工事の見積もり書をよーくみてごらんなさい。こまかい内訳がはいっているか。なになに一式。この一式の中に、設計したにいちゃんの人経費から受付のねえちゃんの人件費から営業のにいちゃんの人件費から接待費からなにもかも詰め込まれているハズですから。もし経費っていう項目があったらコレです。
ふつうハウスメーカーってのはそんなに細かい見積もりなんかつくらないですよ。

でもちゃんとした工務店さんの見積もりには柱一本の値段からドア一枚の値段から書いているものです。

みなさんもなにかを御買い物するとき、安いものを買った時はきっとなにかを諦めているハズ(機能や性能を)
ローコスト住宅の特集良く見て下さい。そのお施主さんもきっとなにかを諦めているハズですから。それでもその家をとても気に入ってステキに暮らしているハズですから。

そんな情熱のあるお施主さんなら大歓迎さんだけど。
ただただ安く建ててくれ。こんなクライアントはあんまり一緒にお仕事したくないものです。

ローコスト住宅というのは魔法ではありませんよ。



玄関の扉
Date: 2001-10-14 (Sun)

設計をしていて玄関の扉の事が話題になったので。

みなさんの家の玄関の扉は外側に開きますか?内側に開きますか?
多分のほとんどの人の家が外側への開き戸になっているハズ(引き戸の人ゴメンナサイ)。
しかしヨーロッパでは逆なんですね。

聞いた話によると、ドアは引くほうより、押す方が力が入るんですって。つまり防犯上部屋内から押せるようにドアが内開きになっているんですねー。
日本はなぜ外開きなのか?
僕の見解だと(もしかしたら極めて一般的なことかも)日本は玄関で靴を脱ぐ文化ですよね。日本の狭い住宅事情でもわかるとおり 内開きだと狭い玄関、ドアが靴にあたっちゃうんですね。だから外開き。

ヨ−ロッパの人たちは玄関で靴は脱ぎませんから。
お金持ちの人!広い玄関のタタキをつくれる余裕があるなら内開き玄関扉、オススメかもしれません。



復活
Date: 2001-10-09 (Tue)

今年の春、大学院を修了し、設計事務所(前回の話に出たいわゆるアトリエ事務所である(爆))に勤務する事になった。半年間、過酷な毎日を送ってましたが、ここでも暇をみつけてちゃんと発言しないとなぁと思い、ひさしぶりにコラム書く事にしました。

トピックなんにしよう!?


ゆっくり考えて書く事にします。(笑)




人生最大のイベント
Date: 2000-11-16 (Thu)

二年程前、とある設計事務所でアルバイトをしていた。
設計事務所といっても所長(僕の先輩)が一人でやっている小さなモノで、この世界では「アトリエ」といわれる建築家の事務所である。

建築設計の事務所は大きく3つにわけられると思う。
ひとつはゼネコンの設計部。巨大企業お抱えの設計部だけに仕事はデカい。もうひとつは組織設計事務所とよばれる巨大な設計者のの組織である。公共事業だったり、デベロッパーと手を組んだり、こちらも仕事は比較的デカい。そして最後がアトリエと呼ばれる、建築家の個人設計事務所である。初任給なし。社会保険なし。というところが大半で、有限会社として法人登録してあったら大きな方である。(この「初任給なし」については別の機会にゆっくりお話しよう(笑))

その事務所は当時3つの住宅の設計の仕事をしていた。
ひとつは40歳代の二人の夫婦の家。こちらは子供さんがいらっしゃらない夫妻で、この先も二人でくらす為の住宅だった。
もうひとつは当時26歳でサラリーマン、まだ結婚はしていないが、親と同居する為に自宅を建て替えると言うのである。いわゆる二世帯住宅である。
最後も当時26歳の3代続く鮮魚店経営の人。婚約者との結婚も秒読み段階で親から譲り受けた土地に夫婦二人と、おばあちゃん。3人で住まうための住宅だった。

僕の任された仕事はこの3人目の施主の住宅で、家の平面計画( いわゆる間取り)を考えて、建物の模型を100分の1のスケールで作るというモノだった。(ちなみに300円のガンダムのプラモデルは144分の1である)

でも僕はこの家よりもむしろ2人目の施主の住宅に興味津々だった。
「そもそも26歳のサラリーマンで、なんで家なんか建てれんねん。お前、この不景気に何千万円という金を借金して、しかもママの御機嫌うかがいながら、人生お先真っ暗やなぁー(爆)」
などと心の中で考えていたのである。

その人の新しい家のプランは、真四角のちいさな敷地に風車のような平面(間取りね)で、まわりに光を取り込むための小さな光庭が4つあって、なかなか気持ちよさそうなゆったりとしたリビングと天井が斜にせり上がる寝室がなかなか魅力的だった。光庭にはアルミニウム製のルーバー(ブラインドのデカいヤツ)がつけられて、うまく回りの家からのプライバシーを確保していた。
敷地にできるだけ大きく家をたてたい&庭も欲しい。という超矛盾したお施主さんの要求にウマく解答していると思い。「先輩!やるじゃん!」と感心したものである。

その設計案をみせる打ち合わせに、その施主とママが事務所にやってくるというのである。
僕は「いったいどんなヤツやろ?」とドキドキしながら待っていたのである。
お昼を過ぎて二人はやってきた。施主はなかなかの好青年でスーツをパリっと着込んでいかにも働くサラリーマン。
ママの方はというと、別に金銀財宝を身につけているワケでもなく、かわりない普通のオバサンだった。
そう、みなさんとかわりないような普通の家庭に育った人達だった。(たぶん)

「そうかー大変だなーこれから何十年とかけてこの家のローンかえしていくのかー。この人」と思いながらみていた。

打ち合わせがはじまり、案の説明も一通り終わったところで、なにやら玄関の門の話になっていた。
普通、玄関の門などは、施主があまりに凝り性だったり、建築家が譲れない部分があったりする時以外は、メーカーの作っている既製品をとりつけるのが常套である。(それでも結構カッコイイヤツを選ぶのだけどね(笑))
玄関の門といってもさっき言った光庭のひとつが玄関口になる予定だから少し背の高い、みなさんが考えるような「いわゆる門扉」とは少しちがうのだけれど。
この時も例外に漏れずメーカーのカタログを広げて、さあ、どれにしよう。という状態だった。

建築家のすすめる物にたいして、ママがどうも納得がいかないようなのである。
先ほど言った様に、アルミニウム製のルーバーの下につくのだから、建築家もこれと同じような色(ピカピカシルバー)でシンプルなモノをすすめていた。
でも、この奥様、もっとゴツいイカつい、「ズィズ イズ 門!」という感じの門が良いらしいのである。

「おぃおぃ、デザイン云々よりも予算的にちょっと無理だろー!」
と思っていたのだが。奥様、口を割って話しはじめた。

「この子(施主の事である)にもいずれ子供がうまれますでしょう?」
「子供だったらこの門の取っ手に手がとどかないんじゃないかと思いますの?」

たしかに建築家のすすめた門の取っ手は少し高い位置についていた。といってもせいぜい1メートルちょっとである。

「子供が一人で遊びに出たり、お友達が遊びに来たりした時に開けられないと困りますもの。」

なんと!孫想いいの、いいおばあちゃんじゃないか!
僕ら設計者が思いもよらない所に目をつけるのである。
でもね。たかだか1メートルのところに手が届かない子供って何歳ですか?
そんなちいさな子供が一人で遊びにでるかい!(爆)(ってゆうか出さないでしょ、あなたが。。)
友達が一人で遊びに来るかいっ!
建築家は上のような事を平たく言って説得し、なんとかシンプルな門に決定したのだけれど。


家を建てるという事は人生で最大のイベントだとか良く言う。
確かに、多くの人たちにとっては人生で最大の「お買い物」だろう。
良く吟味して、間違いのないように、「最高の家を持ちたい」と思うのは当たり前である。
僕ら設計者もその期待にこたえるべく、できるだけ要求を聞き、予算や法規などの条件を整理して、そのなかで僕らなりの「住まい方」の提案をする。
そしてひとつの建築が建ち上がる。

しかし、僕が思うにお施主さんは非常に細かい部分に目がいってしまう傾向にあるんじゃないかなあ?と思う。
「明るい部屋が欲しい」と言っておきながら大きな開口部のガラス窓に、「これって毎日窓ふきするの大変ねぇ」などと言う。

「お前、毎日掃除の時に窓ふきするんかいっ!ってゆうか毎日掃除しとんかいっ!」
「窓ふくのはせいぜい、一月に一回やろ。」

と思うのである。

確かに巨額のローンを抱えるワケだから、僅かなミスも許したくない。そんな気持ちは良く分かる。(というか、実際そうである)
でも、だからこそ、もっと大きな問題を一緒に考えてほしいものである。
自分達は自分達のこれからの生活に対してどういうビジョンをもっているのか。
どういう住まい方をしたいのか。どういう生活をしたいのか。っていう事をもっと建築家とよく議論しましょう。
たくさん議論しただけ、良い建築、良い住宅が生まれますから。

門の事は建築家にまかせてください(笑)


(今回のコラムはユニットs.s.の前のsが担当しました)



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